審判
2015年06月01日
拒絶査定不服審判で補正なしでひっくり返ったら・・・
(注)もともとこのブログは、特許の初心者向けですが、本記事はやや専門的な内容を含んでいます。さまざまな読者が想定されることから、以下、易しい内容と難しい内容が混在しています。ご了承ください。
特許が拒絶された場合には、上級審に当たる審判という手段に訴えることができます。この審判を、拒絶査定不服審判と言います。
拒絶査定不服審判を請求する際には、特許請求の範囲を補正することができます。つまり、拒絶された内容を変更したうえで、審判の場で争うことができます。
特許請求の範囲が補正された場合は、まずいったん、拒絶をした審査官が再び審査します。発明の内容が変わったことから、審査官がそのまま特許できる可能性があるからです。審査官が特許できないときは、審判官に回されます。
一方、特許請求の範囲が補正されない場合は、審査官を経ずに、ただちに審判官に回されます(審査官が再び審査しても、拒絶の判断が変わる可能性が低いと言えるでしょう。)。
ややこしいので少しまとめます。
拒絶査定不服審判を請求して、
①特許請求の範囲が補正されたとき→審査官が再び審査→特許できないときは審判官が判断
②特許請求の範囲が補正されないとき→ただちに審判官が判断
①と②を比べると、①の方が審判の件数として圧倒的に多いです。審査官が再び審査することで、特許される可能性が増えます。そもそも特許請求の範囲を補正をしなければ、特許にならないこともあります。
と、ここまでは、一般的な考え方です。
●しかし、以下のような考え方もあります。
・拒絶査定をした審査官の判断は、絶対におかしい!
・①で審査官が再度介入すると、審判官に何を言われるかわからない。
・そもそも、補正をするまでもなく、特許されるべきである。
・そこで、特許請求の範囲を補正しないで、②のように、ただちに審判官の判断を仰ぎたい。
また、特に、個人発明家や、小規模零細事業者の場合、審判を請求する負担は大きいはずです。費用負担もそうですし、特許になる時期が遅くなることで、機会を逃すおそれもあります。拒絶査定をした審査官の判断が、絶対におかしいと考える場合、何らかの救済はないものでしょうか。
●わたしが審査官時代の議論
わたしが審査官時代に、以下のような議論をしたことがあります。公の議論ではありませんが、賛同してくれる審査官もいました。また、つい先日も、小規模事業の社長様から、同趣旨の意見を伺いました(本記事を書いたきっかけです。)。
つまり、こういう議論です。
拒絶査定をした審査官の判断が絶対におかしいと考える場合、特許請求の範囲を補正をしないで審判を請求します。
②の審判です。この場合、審判官は、他の①の審判よりも、優先して判断するものとします。
そして、審判でひっくり返って特許になったら、拒絶査定不服審判の費用を「返金」してはどうかというものです。あえて言えば、「敗訴者負担の原則」に通ずるとも言えるでしょう。
たしかに、審判の数は増えるかも知れません。しかし、出願人の納得感という観点からは、こういう制度があってもいいように思うのです(さらに言えば、審査の質向上・質同一化にもつながると思われます。)。
今後も、特許の件数が減るようなことがあれば、審判の数が増えても特許庁サイドは対応できるでしょう。また、出願人の納得感が高まることで、ひいては、特許の件数が増えることにつながるかも知れません。まさにユーザーフレンドリーではないでしょうか。
みなさまはいかがお考えでしょうか?たしかに少数意見かも知れませんが、意見を戦わせること自体は重要ではないかなと感じています。
最後までお読みくださりありがとうございました。
東雲特許事務所(しののめ特許事務所)の田村でした。
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一方、特許請求の範囲が補正されない場合は、審査官を経ずに、ただちに審判官に回されます(審査官が再び審査しても、拒絶の判断が変わる可能性が低いと言えるでしょう。)。
ややこしいので少しまとめます。
拒絶査定不服審判を請求して、
①特許請求の範囲が補正されたとき→審査官が再び審査→特許できないときは審判官が判断
②特許請求の範囲が補正されないとき→ただちに審判官が判断
①と②を比べると、①の方が審判の件数として圧倒的に多いです。審査官が再び審査することで、特許される可能性が増えます。そもそも特許請求の範囲を補正をしなければ、特許にならないこともあります。
と、ここまでは、一般的な考え方です。
●しかし、以下のような考え方もあります。
・拒絶査定をした審査官の判断は、絶対におかしい!
・①で審査官が再度介入すると、審判官に何を言われるかわからない。
・そもそも、補正をするまでもなく、特許されるべきである。
・そこで、特許請求の範囲を補正しないで、②のように、ただちに審判官の判断を仰ぎたい。
また、特に、個人発明家や、小規模零細事業者の場合、審判を請求する負担は大きいはずです。費用負担もそうですし、特許になる時期が遅くなることで、機会を逃すおそれもあります。拒絶査定をした審査官の判断が、絶対におかしいと考える場合、何らかの救済はないものでしょうか。
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つまり、こういう議論です。
拒絶査定をした審査官の判断が絶対におかしいと考える場合、特許請求の範囲を補正をしないで審判を請求します。
②の審判です。この場合、審判官は、他の①の審判よりも、優先して判断するものとします。
そして、審判でひっくり返って特許になったら、拒絶査定不服審判の費用を「返金」してはどうかというものです。あえて言えば、「敗訴者負担の原則」に通ずるとも言えるでしょう。
たしかに、審判の数は増えるかも知れません。しかし、出願人の納得感という観点からは、こういう制度があってもいいように思うのです(さらに言えば、審査の質向上・質同一化にもつながると思われます。)。
今後も、特許の件数が減るようなことがあれば、審判の数が増えても特許庁サイドは対応できるでしょう。また、出願人の納得感が高まることで、ひいては、特許の件数が増えることにつながるかも知れません。まさにユーザーフレンドリーではないでしょうか。
みなさまはいかがお考えでしょうか?たしかに少数意見かも知れませんが、意見を戦わせること自体は重要ではないかなと感じています。
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